またまた乙一

夏と花火と私の死体 (集英社文庫) 天帝妖狐 (集英社文庫)
とりあえず、今出てる文庫本だけは読んでおこうと思って。「夏と花火と私の死体」は、これまた主観がありえなーぃ人からの視線で物語が進んでいって「ありゃりゃ…」という感じ。この人、これがデビュー作?なのかな。これは期待の新人って呼ばれてもおかしくないなぁと私も思う。文庫の後書きにはかの小野不由美さんが書いている。私の好きな作家さんが、「あぁこの作家さんも好きだなぁ」と思った作家さんを褒めているのを見ると、何だかちょっと嬉しくなった。表題の物語はもちろんのこと、もう1本「優子」という話が載っているんだけど、これがまた主観というか…。物語を書くという視点を全然別の方向から見てるのだから、訳がわからなぃw 最後まで読めば「なるほど」とうなる。そういう意味もあって、この人の書く物語はいつもわくわくしながら読み始められるのだった。

もう1冊の「天帝妖狐」。こっちは、私にとってはイマイチな作品であった。といっても、今まで読んだ乙一の話の中ではという意味デスネ。表題とは別の「A MASKED BALL」は面白かった。みんな犯人のようで犯人ではない。友達のようで友達ではない。顔の知らない人とトイレの落書きで話をして、ある事件が発生していく。今のネットワークが問題で起きてしまった事件の昔版のような話だ。顔が見えないからこそスリルが生まれ、妙な緊張感が走る。最後まで主語を使っている人物の正体が分からないのも変だった(?)
「天帝…」は、何だろう。何ともいえない後味の悪さが残ったなぁ…。もう最初のきっかけのできごとは良かったんだけど、最後まで書いてない。結果が、最終的な結果が分からない…。一体、彼はどうしてしまったのか。とても気になる。そういう意味で後味が悪い。かたや、正体を書かないほうが妙な面白さがあって、かたや最後まで結果を書かないで、悶々とした印象が残る。そんな感じの本でした。